和歌シリーズ
1
「君がため惜しからざりし
命さえ長くもかなと思いけるかな
とはよく言ったものだな
ああ、その気持ちがよくわかる
俺もお前のためなら命など惜しくないと思っていた
だが、お前が変えた
お前とずっと一緒に生きていたいと思ってしまった
俺の負けだよ
愛している。どうかずっと傍にいてくれないだろうか」
2
「あなたはこんなうたを知っていますか
色見えで うつろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける
まさしくその通りなのです
目に見えずに色あせていくものは、世の中の人の心という花
心は移り変わります
良くも、悪くも。
それでも貴方はあの子に甘えますか
言わなくても、伝わると
そうずっと思っているおつもりですか
それではあの子の気持ちは移り変わりますよ
貴方という愛をくれない者を棄てて
愛をくれる殿方と結ばれる
そんなのは嫌でしょう?
だから、早く想いを伝えてしまいなさいな
時間は有限ですのよ」
3
「はぁ…今年も暑くなってきたなぁ…
もう春は過ぎて、夏かぁ
…少し休みたいな
いや!頑張らないと
俺は大黒柱なんだから
春過ぎて夏きたるらし白妙の
衣干したり天の香具山
…今日ぐらい奮発してお肉でも買って帰ろうか
さぁ、帰ろう
大切な家族が待ってる」
4
「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜をひとりかも寝む
寂しい
怖い
これだから独りの夜は嫌いなんだ
独り暗い夜に置き去りで
永遠に歩き続ける
あぁ、狂ってしまいそうだ」
5
「『花の色は うつりにけりな いたづらに
我が身よにふる ながめせしまに』
あゝ、あの花はもう色褪せてしまった
私の美貌と記憶と共に
ねぇ。あの花をくれた貴方よ
貴方はどこへ行かれたの
私はずっとずっと待っているのに
ここで。この地獄のような地にて
貴方の迎えを十と六つ待っているのに
まだ、貴方は来てくださらないのね
やはり私は浄感寺(じょうかんじ)に
行くというの?
あゝ、私は、わっちは
わっちは…貴方にお会いしとうありんす」
6
「忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
あんたが私の事忘れようとどうでもいいわよ
でも可哀想に。あんたも、女も。
どちらも本当の幸せになんてなれないのよ
だってあんたの愛してるなんて嘘。
全部偽りでしかない
ふん。精々背後には気をつける事ね」
7
「どうか、幸せで
それとなく 紅き花みな 友にゆづり そむきて泣きて 忘れ草つむ
でも、もし願っていいなら
願うことが許されるならば
どうか私のことを忘れないで…」
8
「ははっ、僕は馬鹿だな
告白する勇気がなくてそれで横から
奪われるなんて
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらえば 忍ぶることの 弱りもぞする
なんてな
あいつの負担になるくらいなら
あいつを苦しませてしまうなら…
ねえ、神様
お願いだから僕を殺してよ
あいつにこの想いが伝わってしまう前に
あいつの幸せを壊してしまう前に
僕を殺して
お願い、だから…」
9
「嗚呼、愛しいあなたはいつ帰ってくるのでしょうか
ありつつも君をば待たむうち靡(なび)く
わが黒髪に霜の置くまでに
あなたが待てというのなら
待ち続けます。いつまでも、いつまでも
私が逝く、その日まで」