对
騎士と姫
《表》
「差し出された掌(たなごころ)にそっと、唇を重ねた
あぁ…愛しております
愛しておりますのに。
だのに貴女は俺のことを見てくれない
わかっている、が。もう自分の気持ちに嘘はつけない。だからつい本音を零してしまった
貴女の目に映る俺はただの「騎士」でしかないのでしょう
勿論俺もそうあるように努めていますが
ですが本音を言うならば…言っていいのならば
貴方の瞳に男として映りたい
貴方と共に人生を歩んでいきたい
こんな俺はだめでしょうか
騎士失格でしょうか
…なんて。冗談ですよ姫
次は王との会食となっております
王がお待ちですよ
…意気地ないな、本当に。」
《裏》
「差し出した掌(たなごころ)にそっと、唇の感触が触れた
あぁ…愛しているわ
愛しているのに
私は貴方と結ばれる訳にはいかない
貴方が私を好いているのはわかっている、けど。
それに応えることはできない。
だから、私はいつものように強がった
私はこの国の姫よ
民を守り、民を導く。
その為に生まれ今まで生きてきたわ。
…私今幸せなのよ。彼も優しいし周りの者もみんなよくしてくれる。
だからね?貴方もこの幸せを一緒に護ってね
貴方はとても傷ついた顔をした。
我ながらずるい言い方だなと思う
ごめんね。愛しているわ。私の騎士」
花火
《表》
「君の隣で花火を見上げたこと
海へ行ってクタクタになるまで遊んだこと
映画館に行って見る映画で揉めたこと
全部。全部大切な思い出
ねぇ、君のこと愛してるんだ
他じゃない。今の君を愛しているんだ
でも君はもう数分で死んでしまうんだろう
死んで、新しい君が生まれる
…あの博士の思いのままに
あぁ、悔しい。悔しいよ
どうして僕は君を救えない
こんなにも君のことを愛しているのに…
君からの返事をまだ聞けていないのに
愛してる…愛してるんだ…
あぁ、この手じゃ届かない…
また、君に届かない」
《裏》
「貴方の隣で花火を見上げたこと
海へ行ってクタクタになるまで遊んだこと
映画館に行って見る映画で揉めたこと
全部。全部大切な思い出
ねぇ、貴方との景色は全部鮮やかだったの
色の無い世界で独りだった私を貴方が。貴方だけが色のある世界に連れて行ってくれたの
…でも明日には『明日の私』がいて
『今日の私』なんてもう数分で消えてしまうんでしょう?
この感情も、貴方との記憶も全て消えて
お父様の思い通りの『私』になる
そんなの…嫌だよ
私は私でいたいの
あぁ、嫌。嫌
私は…っ
まだ貴方に何も言えてない!
喧嘩してごめんなさいもいつもありがとうも
…好きという言葉さえも
まだ、嫌よ
消えたく…ない
消えたく、ないの…に」
青
《表》
「全て、羨ましいな
僕は平凡だから。
できないこともない。でもできることもない
生きることが上手すぎて。
そのせいで苦しくなる
穏やかな日々。幸せなんだろう
幸せだよ
でも足りない
その足りないものがわからない
わけも分からないまま苦しい
いっそのこと…死んでしまえたら
楽しい。という感情を取り戻せるのだろうか
あぁ。君になりたいな」
《裏》
「あー、ここに来るの久々だなぁ!
やあ君!元気にしてた?
まあ君に元気も何も無いけど笑笑
相変わらずいい笑顔なことで
…ねぇ、君はさ。笑顔でずっと何を考えてたの?
人生に絶望する節なんてなかったじゃん
友達もいて。暖かい家族もいて
幸せそうに笑ってたじゃん
なのに、なんで自分で自分を殺してしまったの
相談すれば話を聞いてくれる人はいたでしょう?
君は僕の望む「幸せ」を全て持っていたじゃん
わからない。わからないよ
僕は君になりたかったのに」
ヒーロー
《表》
「君は…こんな俺のことをまだヒーローと言ってくれるのか
でも俺は君が思うようなヒーローじゃない
迷って、悔やんで、前に進めないただの男だ
…でも君が信じてくれる
ヒーローだって、そう言ってくれるから。
それだけで、戦える
ありがとう
…もう迷わねぇ。止まらねぇ
俺は…ヒーローだ」
《裏》
「何が悪か、何が善かなんて僕にはわかんないよ
でも…それでも…っ
僕を助けてくれた貴方は、僕にとってヒーローなんだ!
全世界が貴方を否定しても…
貴方は僕のヒーローだ!
折れないで…負けないで!
助けた人から目を背けないでよ!ヒーロー!」
少女
《表》
「『貴方は生きて』
その言葉は呪いだった
大好きな姉の最期の言葉
私は…この言葉に一生縛られるのだろう
でもそれでいい
お兄ちゃんのことも。お姉ちゃんのことも
可愛い妹のことも。あの日の惨状も
全部…全部忘れない
決して許さない
生きて。生きて生きて生きて生き抜いて
必ず彼奴を殺す
彼奴だけは許さない
待っててね。お父さん」
《裏》
「私は泣けばいいのだろうか
それとも怒ればいいのだろうか
この人生を。この血を
独りぼっちになってしまったこの世界で
どうやって生きればいい?
この想いは何処にぶつければいい?
ねぇ、皆
会いたいよ
寂しいよ
独りに…しないで
独りはやだよ
ねぇ、お父さん。どうして?
どうしてみんなを殺したの」
アイス戦争
《表》
「あぁ?アイスが食べたい…って
勝手に食えばいいだろ。俺は今ゲームに忙しいの。見てわかんない?
冷凍庫にアイスがない…?
え、昨日俺が食べたアイス、お前のだったの…?
え、あ、それはごめん…
い、今すぐ買ってきます…ごめんなさい…」
《裏》
「ねぇ。アイス食べたい
ゲームしてる?知らない。
私。アイス。食べたい
もう冷凍庫にアイスがひとつも無いのよね
どこかの誰かさんのせいで
わかったなら今すぐ買ってこいこのくそ兄貴
謝罪はアイスを食べてから聞く」
色
《表》
「瑠璃色…翡翠…黒…ちょっと色の深い水色…ほんの少しのピンク
ん?いや、貴方の声のこと
声に色が見えるのか。って…
そりゃあ、当たり前じゃない?
音には色がついてくるのよ。
え?貴方は見えないの?
…可哀想。こんなにも綺麗なのに
少しだけ私の世界、教えてあげる
(机を3回叩く)
これはね、ミルク色
あ、今車が通ったでしょ?
あれは灰色。
(コップに水をそそぐ)
これは雪みたいな色。
ね、こんなに1つの色でシンプルじゃないけど世界には色が沢山溢れているんだよ。
この色を見れることは…幸せだけど不幸なの
ねぇ。貴方はこんな私をどう思うの?」
《裏》
灰色で色鮮やかな世界
沢山の色が飛び交う世界
ねぇ、君は知ってる?
青にも沢山の青があるんだよ
キラキラした青。ドロドロした青
浅瀬みたいな青。深海みたいな青
その全ての色に意味があって、それでいて全ての色に意味なんてない
この世界は矛盾でできているんだよ
君は幸せだね。こんなものが見えなくて
…君は不幸だね。この美しい色が見えないなんて
ふふ、君はどうかな。どう思うのかな
ねぇ。色のない君
どうなんだい?もっとちゃんと君の色を見せてよ
ねぇ。魅せてよ」
向日葵色
《表》
「ねぇ、君は、あの日のこと、覚えてる?
この向日葵畑で約束したこと。
ふふ。僕はしっかり覚えてるよ
あの日、約束したよね
この世界を救うって。
だから、だからさ。
僕のこと、ちゃんと殺してね。」
《裏》
「あの日のこと…
勿論、私も覚えていたわよ。
世界を救う。そのために今日まで剣を振るい続けてきたんじゃない。
なのに、なんで貴方が…!貴方がドラゴンなんかに!
くっ…もう1つ!約束したじゃない!
私たちはお互いを、守り合うって!
なのに、どうして戦わないといけないのよ!!」